PFスタディについて

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PFスタディについて(1)           2016/12/17

 WISCやDN-CASは知的機能や認知機能を計るもので,一般には「知能検査」というイメージでとらえられるものです。分類としても「知能検査」は一般的です。一方で,「性格検査」と言われるものもあり,いわゆる心理テストについての世間のイメージとしてはこちらの方が一般的かもしれません。PFスタディは「性格(人格)検査」に分類される検査で,比較的簡便に,時間もさほどかからず,子どもから大人まで実施できるので,よく使われます。ただ,「性格(人格)検査」だからと言って,その人の”唯一の性格”を白日の下に晒す,というのは,やはりまだ難しく,ある仮説のもと,あるフィルター(テスト・検査課題)を通しておぼろげながらにうかがい知れるものを,検査の手続きを通して丁寧に掬い上げている,と言った方がふさわしいのではないか,と思えます。PFスタディも同様で,その人の性格に迫るものですが,性格のすべてを明らかにするものではありません。では,PFスタディが観ようとする性格とはいったいどんなものなのでしょうか。PFスタディでは,おもに対人関係上の傾向やパターンを検討します。ですので,物事をやり遂げられない性格だとか,片づけられない性質のようなものが明らかになるわけではありません。趣味や嗜好についてもまた何ら示唆するものではありません。(つづく)

PFスタディについて(2)                                                          2018/11/17

PFスタディのPはpicture,Fはfrustrationの頭文字です。「絵画・欲求不満テスト」と訳されることもありますが,臨床心理学の領域では,そのまま「ピーエフ・スタディ」と呼び習わされています。分類としては「性格検査」に入り,とくに,対人関係(人間関係)上の傾向を検討します。対人関係上の傾向を理解することができますが,自分では気づかなかったけれど本当は○○のことが好き,だとか,特定の他人に優しい/いじわるというのもPFスタディではよくわかりません。ある場面でどう,何を主張するのか,という点に注目していて,その内容と質を検討します。極端な例を挙げれば,「りんごが好きですか」と聞かれて,「好きです」と答えることもあれば,「そんなのどうでもいいでしょ」と答える人もいるかもしれません。「どうしてそんなことを聞くんだ」と聴き返す人もいるかもしれません。これらの違いは,どこから来ているのかといえば,情況や場面の意味をどうとらえて,どう自分の立場を表明するか,という「性格」が関係しているのでしょう。そして,この「性格」を考えていこうとするのがPFスタディの眼目になります。(つづく)

PFスタディについて(3)                                                                                                                  2018/12/28

PFスタディにおいて,「性格」を考えるとき,基盤となっている理論的な枠組みは,精神分析学です。精神分析学は,S. フロイトによって提唱され,発展し続けている,人の「心」についての考え方です。「心」とは取り出して見たり,触って確認できたりするものではないので,仮説を立てて考えていきます。精神分析学の仮説は,「無意識」の意義を唱えたり,心をいくつかの部分や階層のあるものとし,それらの相互関係を重視したりする点に特徴があります。理論そのものについては賛否両論,好みもさまざまで,正しいのか正しくないのか,科学なのか方便なのか,考える(あるいは「信奉する」)立場によって”温度差”があったりします。ただ,精神分析学をもとにした治療に限らず,現在の精神治療や心理療法全般の基礎に大きな影響を与えているのは事実です。PFスタディを受検して,性格検査としての結果の説明を受けても,ちょっと期待していたのとは違ったりするのは,検査の背景や前提となっているものが十分に伝わっていないからなのかもしれません。(つづく)

K-ABCⅡについて

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K-ABCⅡについて(1)                                                                                              2018/10/3(2019/4/2一部追記)

KABC-Ⅱという検査は,Kaufman Assessment Battery for Children の頭文字をとって名づけられた検査の改訂版(第2版)という意味です。Kaufmanは開発した人の名前です。それに,アセスメント(査定)という語とバッテリーという言葉がついています。バッテリーとは,臨床心理学では一般に,複数のいくつかの検査を合わせて行なうことを意味しますが(WISC-Ⅳについて(15)参照),この場合は,KABC-Ⅱという検査自体が,さまざまな能力を測る”一連の”検査になっている,という意図が強く反映されているように思われます。第2版のものは,○○-R,と改訂版と銘打つことが多いようですが,KABC-Ⅱは,第2版であることを強調しているかのようです。対象年齢が2歳6ヶ月から18歳11ヶ月まで拡大されたことも特筆に値します。(つづく)

KABC-Ⅱについて(2)                                                                                                                             2018/10/19

日本語版のKABC-Ⅱは大きく認知面を計る領域と習得面を計る領域の2つに大別されます。本家の米国版,英語版でも,理念としては,認知処理過程と習得度を分けて測定すべき,としています。認知処理過程とは,情報をいかに処理して新しい課題を解決する際に活用するか,ということで(「DN-CASについて」もご参照ください),習得度とは,認知処理過程を通してこれまで習得,獲得してきた知識や技能についての指標となります。どうも,WISC-Ⅳでも,GAI(一般知的能力指標)とCPI(認知熟達度指標)の指標が提案されていたり,より本質的な知的・認知の力とそれによって達成されているものを分けて評価しようとしている傾向があるように思います。(つづく)

KABC-Ⅱについて(3)                                                                                                                            2020/3/19 

KABC-Ⅱでは,認知処理過程全体の評価とともに認知処理のいくつかの種類について数値評価ができるようになっています。同じく,認知処理能力を測るDN-CASはPASSという考え方に基づいて,プランニング・注意・同時処理・継次処理の4つの認知処理能力を検討していました(DN-CASについて(3)もご参照ください)。日本語版のKABC-Ⅱでの認知機能の評価は,全体評価(①)とともに,同時処理(②)・継次処理(③)・学習(④)・計画(⑤)の4つの領域(種類・尺度)の能力を推し量れるように作られていますので,5つの数値評価があることになります。「同時処理」とは,情報の特徴を分析し,記憶するとともに,問題を解決するために,全体的・統合的に整理,活用する認知処理能力です(DN-CASについて(5)もご参照ください)。「継次処理」とは,情報の特徴を,順々に・逐次的・直線的・時間軸に沿って,という観点で整理,記憶し,問題解決に活用するお力になります(DN-CASについて(6)もご参照ください)(つづく)

KABC-Ⅱについて(4)                                                                                                                            2020/4/2 

KABC-Ⅱでは,同時処理・継次処理・学習・計画の4つの領域(種類・尺度)の認知処理能力を検討することできます。「学習」とは,注意を保ち,獲得した情報を目的に向けて効率的に分析,記憶し,新奇の課題を学習する際の基本となる能力です。名称から学校での勉強の成績と強く関係するような印象を抱きやすいですが,具体的な成績のことよりはもう少し抽象的な“学習し得る能力”といったものを示唆しているようです(学校での勉強での成績により近いのは「習得度」の指標です)。さらに,KABC-Ⅱでは視覚刺激(情報)を強調していて,提示された視覚情報の特徴を短時間のうちに的確につかみ(注意力),とくに意識せずとも記憶しておき,しばらくの間記憶したものを保てておけるか(符号化),さらにこうしたことを効果的に,戦略的にできるかという観点での力を「学習」の課題で観ているようです。

一般的に机に向かって行なう勉強の場合は,視覚的な情報が多いのだろうと思いますので,その点で「学習」の領域は学校の勉強の習得との関連は小さくなく,この「学習」の結果には注目したいところです。しかし,聴いて得られる情報も生活上では存外大切です。この点は十分に留意されていない印象があります。口伝なんて聞くと怪しいもののように思え,文書など視覚情報を元に視覚情報で応える方が客観的で明解であり,とくに現代の必要にマッチしているようですが,意識を向けるにせよ,軽く聞き流しているだけにせよ,聴覚的な情報のやり取りは重要で,いろいろやっているのに勉強の成績が伸びないことや座学の割合が少なくなる大人でのうまくいかなさの背景に得られるべき聴覚情報が量と質が十分ではないことが関係している場合があります。例えば,歳を重ねて耳の聴こえが良くなくなった方を周囲が認知症と誤って見立てられている場合は珍しくありません。周りで何が起きているかわからないくらいに没頭している子どもや大人というのも,一見,集中力があると周囲からは好意的に受け止められがちですが,これらのケースでは周囲との交流は遮断されがちで,考えたり,思い巡らせたり,あとあと統合されることもある聞きかじりの知識などの総量は少ない場合があります。WISC-ⅣのワーキングメモリーやDN-CASの継次処理の課題を聴覚刺激の課題としてどう対処しているのか,と考えてみるのも興味深いように思います。(つづく)

 

Kaufman, A. S., Kaufman, N. L. 日本版KABC-Ⅱ製作委員会(訳編).(2013).日本版KABC-Ⅱ マニュアル. 東京:丸善出版株式会社.

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